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基礎知識

なぜ透過は怖いのか。経皮吸収のメカニズム
-後編- 経皮吸収が引き起こす健康リスクと対策

なぜ透過は怖いのか。経皮吸収のメカニズム<br>-後編- 経皮吸収が引き起こす健康リスクと対策

前編では、化学物質が皮膚を通過する仕組みについて解説しました。

「皮膚に到達した化学物質」は、その後どうなるのでしょうか。

ここからは、経皮吸収によって体内で起こることと、そのリスクについて説明していきます。


目次

    化学物質が経皮吸収されるとどうなるのか

    表皮を透過した化学物質は毛細血管から血流に入り、各種臓器を巡ります。
    その多くは、最終的に尿中に排出されますが、有害性のある物質に、慢性的に(継続的に、長年にわたって)ばく露し続けると、各種臓器にダメージが蓄積し、がんや内臓疾患などの健康障害が引き起こされる恐れがあるとされています。

    経皮ばく露の事例

    実際に化学物質の経皮吸収が原因でがんを発症したとされる事例がいくつか報告されています。

    2015年、福井県の化学工場でオルトトルイジンという化学物質を取り扱い、染料・顔料の中間体を製造していた作業員らに、膀胱がんが多発していることが発覚しました。

    調査の結果、作業環境(空気中)の濃度は基準値以下だったのですが、作業員の尿から高濃度の代謝物が検出されました。
    このことから、呼吸による吸入よりも、手袋や作業服を介した皮膚吸収が主原因であったことが示唆されました。

    2021年頃、静岡県の工場などでMOCAという化学物質を製造、使用していた職場で、退職者を含む複数の作業員に膀胱がんが発生しました。作業台や床に付着した粉塵が皮膚に触れることで、皮膚から体内に吸収され(経皮吸収)、それが長期間にわたってばく露が続いたことで、膀胱がん発症に繋がったと考えられています。

    化学物質には、皮膚に付着しても痛みや刺激がない/少ないものが多くあります。
    そのため、皮膚に付着していること、ばく露していることに気付きにくいというのが非常に厄介な点です。

    また経皮吸収によるがんや内臓疾患などの健康障害は、接触性皮膚炎のようにすぐに症状として現れるのではなく、長年ばく露し続けることで徐々に体が蝕まれていき、数年~数十年経ってから発症するとされていますので、こちらもばく露に気付きにくいのです。
    この「時間差と実感のなさ」こそが、化学物質の経皮吸収を甘く見てしまう最大の要因の1つと言われています。

    接触性皮膚炎も

    こうした経皮吸収による健康障害のほか、化学物質のばく露により皮膚炎などの皮膚障害を起こすことも少なくありません。

    手袋を透過した目に見えないレベルの微量の化学物質が手に触れただけで、痛みやかゆみを感じたり、指先が白くなった、という人はたくさんいます。場合によっては、将来のがんよりも今のこの苦痛の方がつらいという人もいるかもしれません。

    また、このような症状が出ているということは、皮膚のバリア機能が低下しているということですから、より化学物質が経皮吸収されやすくなっている危険な状態と言えます。

    まとめ

    皮膚のバリア機能には個人差がありますし、体調や環境、加齢などによっても変わります。

    「自分は大丈夫だから他の人も大丈夫」
    「今まで大丈夫だったからこれからも大丈夫」

    このように考えるのではなく、化学物質の経皮吸収というのは誰にでも起こりうるものである、というように考えましょう。
    その上で、有害な化学物質を取り扱うのであれば、その化学物質が手に触れることがないよう、化学物質の透過を防ぐことができる適切な化学防護手袋を着用するようにしましょう。

    関連ページ:化学防護手袋の選び方

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